『わがまま きまま 想うがまま』 日本本土から南に1000㌔小笠原諸島・父島から出発。 花鳥風月を感じ、カナダを旅していきます。

2016年8月9日火曜日

『霧の島』

2 件のコメント :

日本でも有名なカヤックポイント・Telegraph Coveから

海峡を挟んで目と鼻の先にある島、

マルコム島のソインチュラ(Malcolm island/Sointula)


正直

この島のことは全く知らなかった。


改めて、船のチケット売り場のおばちゃんに感謝。
(きっと、あなたに「アラートベイより私は好きな島よ~」と聞かされなければ、
訪れることはなかったと思う。
そして、アラートベイから船賃タダで行ける方法を教えてくれて、ありがとう。)


この島は、私にとって素晴らしい経験をさせてくれた。

なぜなら、ここでもカヤックを漕ぐことが出来たからだ。


島のメインストリートでさえ中央線はなく、

飲食店・商店も片手で数えられるレベル。

当然、カヤックショップはなかった。


ただ、
宿のオーナーさんがカヤックレンタルをしているかも~
という情報を教えてもらい、
すぐに電話してみた。

オーナーは直接カヤックを見においでよ。
と言ってくれた。

行ってみると、
長靴を履いたオーナーさんが出てきた。

彼は自ら木を伐り、土地を広げ、自分で家を建てていた。

なんでここに住んだのか聞いてみたら、
彼はカヤック乗りでここの海に惚れたんだとか。

彼にマルコム島の海の様子を聞き、
今回の予定しているコースを相談した。


冒険するつもりはまったくなかった。

シャチやザトウクジラが泳ぎ、

アザラシやトドが水面でのんびりしている。

ただ、海は常に忙しく、動いている。

そんな海に浮かんでみたかった。


干満差4m

午前中は濃霧、午後は山から吹き下ろす北東風が強く入る。

一見、霧があるときはカヤックを漕ぐには条件が悪そうだが、

コースさえしっかりわかっていれば、視界がきかなくてもなんとかなる。

むしろ、風・波がないという良い条件が揃う。

注意しなければいけないのは、午後から。

この時期に、
この島の山から吹き下ろす風と戦うことは、チャレンジでしかないとオーナーは言う。

オーナーからさらに風を上手に味方にするアドバイスを受け、

私達はカヤックを1泊2日でレンタルする許しを得た。


マルコム島の海を漕ぐことが出来るのだ。


カヤックを借りる日の朝

予想通り、濃霧で風は吹いていない。


シングル2艇借りて、いざ出発。


水面はまるで寒天ゼリーのような、つるんぷるんとした感じ

カヤックで進んだラインが、くっきりと水面に残る。


海鳥たちは水面に浮かびながら、

たまに顔を水につけて、魚を探している。

その波紋が鳥を中心に広がっていく。



パドルを水面から出した時、水滴が海に落ちると

音が聞こえる。


憧れていた海はとても静かで、

すべての音が身近に感じられた。


2時間漕いで、無人島に上陸した。

目の前の水面は潮の動きによって乱雑していた。

ランチ休憩とともに浜散策。

潮は引いていたので、貝がたくさん岩肌についているのが見えた。


この海にシャチがいると思うと、ついつい海を眺めてしまう。

あっという間に潮は上げ潮に変わり、ランチ休憩を終え、再びカヤックを漕ぎだす。


ジャイアントケルプが水面に漂っている。

空気をためた浮き袋が付いているため、海中で直立して浮いていることができるのだ。

そのケルプを上手に使って休憩するアザラシたちは、

顔だけこちらに向けて、様子を窺っていた。


2羽のハクトウワシが樹の枝にとまって、こちらを見下ろしていた。

1羽の足元には捕まえたばかりの魚がしっかりと握られており、

つついては、

隣の1羽に自慢げな顔を向けていた。


午後から霧が薄くなってきたが、いぜん雲は厚いまま。

時折、冷たい雨が降る。

8月の中旬にも関わらず、上半身は4枚も服を着ていた。

小笠原の冬よりも圧倒的に寒い。

水温は夏でも13度程度しかない。

この冷たい海水と風・雨で、私達は冷え切っていた。


海岸沿いにあるキャンプ場に到着。

カヤックをテント前まであげ、

すぐに薪をくべて火をつけた。

火のありがたみをしみじみと感じた。


夕飯を作り、のんびりしていると、

目の前の水面がばしゃついているのに気付いた。

よく見てみると、2頭のアザラシがケンカしていた。

互いに首にかぶりつき、水面に顔を押し込んでいた。


やがて、あたりは暗くなり、霧が再び出始めた。

火は霧に包まれ、ぼやっと灯っていた。


目の前の海も見えなくなり、

鳥の鳴き声を聞きながら、

火の揺らめきをじっと眺めていた。



ブッシュー


少し低音で短めのブローが聞こえた。

全感覚が張り詰めた。

海の波のひとつひとつが互いに重なりあう音が聞こえる。

シャチのブロー音だった。

1頭だけ

霧で海すら見ることは出来ないが、

私の目の前の海を横切っていくように泳いでいった。

たった7回の呼吸音

それだけで私の心は高揚していた。



やがて、霧が薄くなった。

ブローはもう聞こえない。

月明りで海は見渡せるが、シャチの姿はなかった。




翌日は、島の縁に沿って、北上して行く。

島影に隠れるコースなので、潮・風の影響を受けづらい。

そのため、昨日よりは気持ち的にも体力的にも楽だった。



やはり午前中は霧


途中、透明度の良い場所で水中をのぞき込む。



カニが海底をのそのそ歩いているのが見えた。

パドルを水中にさし、カニをつついてみる。

意外にもゆっくりと逃げていく。

カヤックをこまめに動かしながら、カニを追いかけてみた。

やがてカニも観念したのか、大きなハサミを持ち上げて、戦う姿勢をとった。

ハサミはパドルをしっかりと挟んだ。

そのまま、そっと持ち上げて、

カヤックデッキの上にカニを放った。

今晩の夕飯ゲット☆



カヤックだと動物たちの警戒心は低くなるように感じる。

干潮帯の岩場でハクトウワシが休憩していた。

普段は樹の上にいることが多いのに、

このときは逃げずに、のんびりと岩場にいた。

また、オオアオサギ(Great Blue Heron)は

カヤックから距離10mほどの位置に近づいても、

じっと動かずに水面をにらみつけていた。

魚が来るのを待っているのだろう。


私はカヤックが好きだが、

たんたんと漕ぐだけの乗り方は好きではない。



海の上を漂うカヤックから眺める風景

それは自然の中から自分という存在がなくなり、

自然の日常の風景が見えてくる。


時にその風景は今までに見たことのない景色だったり、

新しい見方や発見を教えてもくれる。

その時間を過ごすのが好きだ。



マルコム島で漕いだカヤック旅は

あらためてカヤックの楽しさを再確認したものだった。

そして夕飯は、自分たちで捕ったカニと貝

この味もまた大切な思い出の味となった。




あとがき

後で調べてみると、このカニはレッドロッククラブというカニでした。
身は少ないですが、大きなハサミに詰まった身とミソは美味でした。
このカニを3杯捕まえるのに、
腕を海につっこみ、服を濡らし、
身体が震えながらの捕獲でした。
本当に美味しかったです。また食べたいな(2016.11.12)




すだっち

2 件のコメント :

  1. カヤック! えーーーやん~
    カニ、うまそーーーー!
    自分もただただ歩くだけって好きじゃないんよね~ 
    つい色んなものに目が行ったりね。
    WAでは食べられるものがいっぱい歩きながらゲットできてうれしかったー
    なかでもキクラゲは最高においしかった!
    泊まりカヌー、やはりいいよね~~

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    1. キャンプカヤック、良い!!
      すごく寒かったですけど、フャイヤーしながら食べた貝やカニは最高でした。
      ついつい寄り道ばかりしちゃって、なかなか予定通りに進まなかったですけどね
      きくらげ~いいなあ~
      山の幸ですね!

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